起業家の定め 不完全な情報でも意思決定しなければいけないときの考え方

誰しも判断に迷い、決めかねるときはあります。

迷うときはだいたい十分な情報がないから自信を持って決めることが出来ないものですが、それでも社長なら何かしらの判断をしなければいけないのが辛いところだと思います。

今回はそんな時どうするかがテーマです。

 

目次

前回のおさらい

前回(「戦略立案の最重要基本スキル 「表を書く!」」の記事では、印刷会社の設備投資に迷ったときの話を書きました。

 

[設定]
今ある印刷機の老朽化や生産能力を気にしている印刷会社の社長が、そろそろ新しい設備を入れるべきか考えているという設定です。

新設備導入のメリットは、最新機材によるコストダウンや生産能力の増加です。逆にデメリットとして、新しい機材をいれても今後の需要が伸びなければ投資が無駄になるかもしれないというのが社長の悩みです。

[前回やったこと]
まずは、下図のような簡単な表を書いてシナリオ別に検証し、絞り込んでいくという流れでした。

WS000125

そうすると、4のケースは選びたくないということがわかりますが、その他の3つのシナリオについては比べるのが難しいという話になります。

これらの比較には、新設備のコストダウン効果や、マーケット動向について情報が必要になるためです。

 

今回の注目点

ということで、本格的に各シナリオの比較をするなら必要な情報を手に入れてきて計算してみればことは足ります。

まず、2で不確定なのは、どのくらい固定費と変動費がさがってくれるかですが、これは新設備のカタログをみたり、メーカーにデータを依頼することで解決できるので問題ありません。

 

問題なのは、マーケット動向です。

前回はマーケットリサーチをするお金がないということでそこには一切触れないで考える道を模索しましたが、今回は最善を尽くして検討したと言えるように、もう一歩踏み込んでみたいと思います。

 

どうするかというと、マーケット動向(将来の需要がどうなるか)について予測を立てて検証します。もちろん、ピンポイントで未来予測をすると外す可能性が非常に高いので、予測の仕方を工夫します。

 

未来は一点ではなく、「需要が増える未来から、需要が減ってしまう未来」まで、広い幅を持っていると考えるのがコツです。予測というよりは仮説を立てていくという方が近いかもしれません。

大事なのは、「当てよう」と予測するのではなく、未来に起きうる可能性を列挙していくことです。

 

今回の例では、
・需要が半減する場合
・需要が変わらない場合
・需要が倍増する場合
に分けて検証することにします。

 

需要が現状維持の場合の検証

これから3パターン検証しますが、細かい計算はすっ飛ばしても問題ありません。今回は幅のある仮説として未来をとらえて意思決定していくことが主眼なので、流れだけつかんで頂ければOKです。

 

まず、新旧設備の能力比較をします。

旧設備
・生産可能数:300部
・固定費:1000(売上げがあってもなくてもかかる費用)
・変動費:1部あたり10
新設備
・生産可能数:450部
・固定費:700
・変動費:1部あたり7
その他数値
・1部あたり20で販売
・現状オーダー数 200部

さて、それでは需要が将来変わらない場合の比較をしてみましょう。

WS000127

この表をみると、もちろん売り上げは設備を入れても入れなくても変わりません。

しかし、新設備のコストダウン効果によって利益率が25%から48%まで上がっています

 

需要が倍増する場合の検証

注文数が倍になったとき、何が起こるでしょうか?

まず表にしてみましょう。

WS000128
一番問題なのは、旧設備では生産可能数が上限にあたって注文を捌ききれないことです。

これは最初の表の4のケースのことなので、もちろん考えるまでもなく選びたくない選択肢です。

 

しかし、新設備を入れた場合の結果は目覚しいものがあります。

経営者ならもちろん、最悪の状況を想定することも必要ですが、チャンスが来たときにつかめるような準備も怠ってはいけないということでしょう。

 

需要が半減する場合の検証

では、最後に需要が今後半減してしまったらどうなるでしょうか?

これも表にしてみます。

WS000129

まず目につくのは、旧設備のままでは利益がゼロになってしまうところです。これはまずいです。

しかし、新設備の方ではなんとかプラスに出来ています。

 

まとめ

こう見てきて、あなたが社長なら設備投資する方向に決まりましたでしょうか?

それもそのはず、どの未来が起きても新設備の方が高い利益率を出せそうですね。

 

それどころか、ここで現状維持を選んだら、あとは景気次第で会社がつぶれるかもしれないと気づけたわけです

マーケットリサーチが出来なくても、少しでも需要に不安があるなら、この機会に投資しておくべきだと分かります。

 

もちろん、次は投資額(設備金額や借入で買う場合の利息など)が、新設備のもたらしてくれる恩恵と比べてどうか?という検討が必要です。

しかし、新設備を入れるかどうかという当初の迷いについては答えが出た分、より具体的なステップに進めたのではないでしょうか?

 

今回のように情報が無くても、完璧ではないにしても、幅のある仮説を立てて検証してみることで、悪くない策をとることができます。

あれこれ悩んでいるだけでなく、手を動かして考えを進めていけば、実は、悩むことなんて無かったということが分かることもあります。

 

足りない情報を元に決断しなければいけない時は、未来を予測して当てようと考えずに、仮説を立てて検討を尽くしてください。

ではまた!

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この記事を書いた人

田畑ゼミ主催者。

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