初心者向け英語の勉強法 (第10話 形のあるもの)


― 中学1年生、省吾は初めて英検を受ける。 その後高校1年で英検1級をとることになる省吾が、最初にやっていた英語勉強法とは? ―

小学校の頃から、ハリウッド映画が大好きで、俺もいつかあんな粋なブラックジョークで人を笑わせてみたいと思っていた。

普通のテレビ番組はまったく見ないが、週末となれば、親に無理言ってレンタルビデオ屋に連れて行ってもらうのが楽しみだ。なぜ「無理」かというと、車である程度走らないとレンタルビデオ店がないからだ。

それでも、両親ともに、映画を見るのは好きな方だから、結局は皆で車に乗って映画を借りにいく、という流れが定番になっていた。

そんなこともあって、俺は英語だけは身に着けたいと思って、一生懸命字幕を隠して2度、3度と同じ映画を観たりしていたが、それでも断片的に単語が耳に入ってくる程度を超えなかった。

そんなころ、近所にイギリスから仕事で来たというアダム・ピアース一家が引っ越してきた。


こんな田舎町にわざわざ海外から来るとは、いったい何の仕事があるのかと思いながら、俺は興味津々だったので早速引越し祝いということで訪ねていった。

アダムは日本語がペラペラだった。何なら関西弁だ。でも、もっと俺の興味をひいたのはアダムの家には当時珍しくWowWowが入っていたことだ。


それからというもの、たまにそこで映画を観させてもらったりしていたが、アダムによれば、さすがに字幕なしで映画を見るのはまだ難しいとのことだった。

そこで、教えてもらったのが、イギリスの子供向けの簡単な教材だ。
アダムは、ピアース家の子供が小さいときに使っていたという薄いテキストと、絵のついた単語カードをくれた。

「まずは、挿絵のついたストーリーを読んで、その後に出てくる10個の質問に答えるんよ。」

「分からん単語があれば、辞書を引いたりせんで、まず文の流れから想像するんやで。」

これが、初めての英語勉強方針だった。

たまにアダムの家にいくと、質問をするパートをアダムがやってくれた。

アダムはチーズケーキが大好きで、適当にミキサーでまぜて焼いたチーズケーキを授業料代わりに持っていった。余談までに俺は料理もできる小学生だった。

簡単な子供向けストーリーだが、数をこなすごとに、着実に、英語が分かるという感じが分かってきた。どうしても分からない単語は、アダムが絵を描いたり、ジェスチャーをしたりして教えてくれた。


中学校に入り、丁度英検というものがあるのを知った。
俺は試しに3級を受けてみることにしたが、レベルや内容はアダムがくれたテキストとほとんど変わらなかった。


つづく・・・

あとがき

英語をはじめて勉強するとき、または一からやり直したいときは、なるべく具体的な形の見える内容で始めるのがお勧めです。

文章なら、情景が映像として浮かぶようなもの、単語なら、まずは絵やジェスチャー、表情で説明できるような内容のところから始めるということです。

どんなものでも、基本的に抽象的になればなるほど、理解が難しくなっていきます。抽象的というのは、ある見方をすれば、どんどん目に見えない、形のないものになっていくという意味だからです。


また、英語を本当の意味で身につけようと思ったら、どうしても英語は英語として理解する仕組みが必要です。

日本語でも、英語でも、表現の方法は違えど、「表現したいこと」は同じはずです。

例えば、目の前に美しい花が咲いていることを電話の相手に伝えたければ、目指すのは相手の頭に、自分の見ている風景が、映像として浮かぶことではないでしょうか?

もし支障がなければ、日本語訳を作る、という作業はある程度英語がつかめたと思うまでやらないほうがいいです。

私は、英語を読んで、聞いて、文章が意味することを、頭のなかで音や映像、感情を使って組み上げていく、という動作が英語習得の第一歩だと考えています。

いつもお読み頂きありがとうございます!
※この物語は、実体験をもとにしたフィクションです。


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