今のままの人生でいいの? (第41話 ラーメン屋の犬)

鎖と手

― 5月の連休に入り、省吾は数日実家に帰ることにした。駅から家に向かう道すがら、省吾は一頭の老犬を見かけて、あることに気づいた。 ―

たった1ヶ月東京にいただけで、田舎の空気の良さをこうも実感できるとは思わなかった。

何の変哲もない町だが、風にふかれて適当に歩くだけで良い気分だ。

大学に入ったばかりだというのに、早くも卒業後の進路について考えなければいけない。

家に帰れば、親との話し合いが始まるのは分かっている。

俺はなるべく遠回りして、このすばらしい自然を堪能することにした。

あてどもなく、坂を下り、路地を抜け、あるとき丁度ラーメン屋の角に出た。

小さな頃、このラーメン屋に何度か連れてきてもらったことを思い出しながら、

また別の路地に入ろうとしたとき、店の軒先に一頭の老犬がいることに気づいた。

「ああ、あの犬か・・・」

この犬は、よく脱走することで有名で、うちの庭に迷い込んできたこともあった。

そのうち、飼い主も鉄の鎖でつないだり、頑丈な柵をつけたりしたようだが、今はもう放し飼い状態だ。

犬の方も、もうあきらめたのか、歳なのかしらないが、すっかりおとなしくなっている。

「昔はあんなにやんちゃだったのにな。」

しっぽを振って近づいてきてくれたが、軒先を出ることはないようだ。

あるところまで来ると、ぴたっと動きが止まる。

まるで今も鎖でつながれているようだった。

そう思いながら。ハッとした。

「俺はこの犬と同じだ。」

大学受験については、本当に自分の意思で志望校を決めたかどうか、はっきり自問自答した。

大学合格は、俺だけでなく、親も強く希望していた。

そのため俺はどうしても、その目標が自分のためのものであるか、最初に確認する必要があった。

自分の中に根ざす理由でなければ、つらいとき、最後の頑張りが効かないからだ。

だが、大学に入ったあとの進路については考えていなかった。

大学受験はたまたま、自分と親の意見が合致しただけであって、今後もすべて同じ路線で協力していけるかどうかは別だろう。

親としては、勉強を続けて国家公務員を目指せと言う。

俺も、その話を聞いたときは悪くない話だと思った。

だが、無限に開けているはずの選択肢を前に、親の言うなりに人生の舵取りをしているのかもしれない。

そう気づいた。

ラーメン屋の犬のように、自由に動けるようになっても、それに気づかないで一生を終えるのだけは勘弁だ

いつの間にか、勉強をして上を目指すことだけが、人生のすべてになっていた。

もちろん、それ自体に悪いことはないだろうが、一番やりたいことが何か、考えもしないのはもったいない。

「家に帰ったら、話してみるかな・・・」

自分の気持ちに気づけたことは嬉しかったが、気分は重かった。

つづく・・・

あとがき

人は環境に慣れる生き物ですが、その慣れが、自分を縛ることもあります。

何かやってみたいことがあるのに、中々一歩を踏み出せないなら、

自分は、自分で思う以上に自由に思考し、自由に行動出来る人間だと考えてみて下さい。

やりたいことが見つからない時も同じです。

「やれそうなこと」の中にやりたいことが無いだけではないですか?

やりたいことを探す時に、最初から除外する選択肢があれば見直して下さい。

あなたの首には鎖なんか付いていないはずです。

いつもお読み頂きありがとうございます!
※この物語は、実体験をもとにしたフィクションです。

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