時間の無駄遣いに後悔したくない (第1話 あのときの1時間)

腕時計

―省吾18歳。4月のある暖かい日、にわかに散り始めた桜の花びらが舞う中、省吾は日本武道館から九段下に向けて歩いていた。今日は念願かなって合格したT大学の入学式だった。―

「思えばあの日が分岐点だったな・・・」
ゆったりとした風を顔に感じながら、俺はとてつもなく苦戦した去年の模試のことを思い出していた。

時間が足りない・・・。

もう高校3年生だというのに、まだ友達とゲーセンにいったり、カラオケにいったりと遊び気分は抜けていなかった。家に帰れば新作のゲームをどうしてもクリアしたくて、模試の前日まで、俺はある意味で「あきらめなかった」。

「あと1時間で止めなさい!」

親も時期が時期だけにそわそわしているようだ。

志望校の判定には重要と言われている模試だったが、1科目目の数学でいきなりやられた。問題を解こうとしているのに、糸口も見つからない。とりあえず何か一つそれなりの問題を解いて、ペースをつかもうという、いつもの戦略は始めから崩れた。

どの問題から解いて良いか迷いながら、腕時計をみると手つかずの状態でもう20分が経過している。とにかくどうにかしなければいけない。あれだけ遊び倒しておいて、「出来ませんでした。」では言い訳が出来ないな・・・等と、どうでも良いことから頭に浮かんでくるから不思議だ。

見るからに配点の低そうな簡単な問題をいくつか解き始めるが、計算に集中できない。焦れば焦るほど、筆圧だけが高くなっていく。それでも何とかなると信じて、くらいついたが半分も解けない状態で、試験官が残り5分を宣言するのが聞こえて我に返った。

あとは未解答の問題に、公式なり法則なり関係有りそうなことを書き殴って、運が良ければ部分点が来るかもしれない。そんな小細工で試験は終了した。

「あのときの1時間があれば・・・」

答案回収が済むと、ぐったりした俺は自分のYシャツが濡れて冷たくなっているのに気付いた。そのあとの科目は、もうぼろ負け状態だった。

俺はその日、本当の意味で時間の大切さを知った。時間はあるときにはあるが、無い時にはない。当たり前のようだが、時間があるときに、どれだけその時間を将来に活かせるかで、厳しい時を乗り切れるかどうかが決まってくるのではないか?

時間は限られている。そしてひどく不均衡だ。

もうこんな後悔はしたくない。やってみて失敗したことなら後悔しなくて済む。しかし、俺はあれだけあった時間に、できたはずのことを、精一杯「やらなかった」。一方的に過ぎていく時間を、全力で使い切るにはどうすればいいのだろうか?

つづく・・・

あとがき

時間というものは貯金ができません。だからこそ、「今」自分が過ごしている時間で、できる限りのことをして生きたいと思います。あなたは「今」をちゃんと使い切っていますか?

いつもお読み頂きありがとうございます!
※この物語は、実体験をもとにしたフィクションです。


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