起業家にとって商品作りより大事なこと―「本を書く」と言って7千万集めた事例に学ぶ

白紙の本を持っている手

起業、新規事業立ち上げなど、不確実な状態で製品を作り上げていくためのバイブルみたいな存在である「リーンスタートアップ」の著者、エリック・リースが次回作「The Leader’s Guide」を執筆中です。

クラウドファンディングで資金集めというか、企画を立ち上げたのですが、この本は今後一般書店で販売されることはないというので、初めてKickstarterを使ってみました。

といっても、今日はKickstarterの話ではありません。どちらかというと、製品開発とかマーケティングの話になります。

製品が出来る前から7,000万円が集まる

そんなわけで、テストコミュニティに入れる枠に参加してみました。

作成中の本に関するベータテストコミュニティがあって、その中で作者が、読者に意見を聞いたり、反応を観察しながら「本」という製品を磨き上げていく過程を見てみたかったからです。


このプロジェクトは、起業とか事業立ち上げのプロセスをそのまんま、「執筆」というところに当てはめたらどうなるか? というような企画で始まったと聞いています。実際、その過程がどう動いていくのかに非常に興味があります。

製品が出来る前から既に7,000万円以上の資金が集まっちゃってる状態ですが、これからの時代は製品をがっちり作りこんで売るのではなくて、先に自分に共感できる人を集めて、その人達と一緒に、その人達のための製品を磨いていくスタイルが生き残っていくでしょう。(何か天気予報みたいになっちゃってますが・・・)

製品開発とマーケティングを分けて考えるのは時代遅れ?

マーケティングという言葉は使う人によって非常に幅広いバリエーションを持っています。

大前研一氏のように、30年以上前から「製品・販売戦略」と訳して広い視野を持っている人もいれば、現在でも営業や製品開発と分けて考える人もいます。

いずれにしても、マーケティングの主要な役割として「見込客を商談の席まで連れてくる」、という部分は変わらないと思います。

さておき、製品開発とマーケティングを分けないで済むのであればそれに超したことはないはずです。

エリック・リースの言葉を借りれば、「顧客が体験すること全てが製品である」からです。

マーケティング活動における顧客への情報発信も、カスタマーサポートも、顧客の視点から見れば製品と一体なのは、ある意味当たり前です。

どんなにおいしい料理を出す店でも、目の前でシェフが見習いに小言を言い続けているようなレストランには二度といきたいと思わないでしょう。

顧客になってみたら当たり前のことでも、何故か自分が企業側にまわると見えにくくなるから不思議です。

今回のエリック・リースのプロジェクトでは、「人を集めること」がすでに製品開発の前提になっています。
クラウドファンディングでお金を集めるというよりは、思いに共感する参加者を集める方が主眼です。

最後には、「本」という製品が届くわけですが、

・一緒に作り上げていく過程を共有する。
・コミュニティの参加者の話が実際に事例として本に取り上げられたりする。

こういったこと全てが「製品」なわけです。

製品開発で一番大事なこと

これから起業するなら、いきなり製品、サービスを作りこむのは避けた方がいいです。

起業が成功するのに必要なのは何か?
しつこいですが、それは「お金を払ってくれるお客が付くかどうか?」これだけです。

だとすれば、製品作りに一番求められることは、その製品が「お金を払ってまで欲しい」という価値を提供できているのか?
これを確かにすることです。

実際、自分自身の悩みや苦しみを解決しようと思って作った製品なら、その他の人にも役立つ具体的な価値がある可能性は高いです。

しかし、自分の持っているアイデアや、技術からスタートしている場合、自分が出来ることで、誰の、どのような悩みや苦しみを解決出来るだろう?と考えるコトになります。

例えば、自分はプログラミングが得意なので、誰かに役立つツールを開発しよう!という場合がこれに該当しますが、じゃあどんなツールを作れば具体的な価値を持つのかを当てるのは至難の業です。えてして、開発者の意図と、ユーザーの意図はずれてしまいます。

だからこそ、製品開発ありきではなく、リーンスタートアップ風に言えば「実用最小限の製品」を作って顧客に提供し、意見を聞いたり反応を観察することの方を主眼とするわけです。

結局、不確実な状況で製品を作り出すなら、全ての考えは仮説に過ぎません。

何が事実で、何が事実でないのか?

それは、ユーザーの声を聞き、反応を観察することで、慎重に仮説を検証しながらつかんでいくしかありません。

そうでなければ、もう戻れないところまで来て、大きく外す製品が出来たことに気付くかもしれないのです。


誘導式でない打ち上げロケットは角度がほんの僅かにずれるだけで、目標にかすりもしないところに飛んでいきます。そのやり方では完璧な計算がなければあたりません。

しかも、世の中は常に不確実性のもとで動いており、完璧な予測などたちません。要するに、新規ビジネスを狙って当てるのは難易度が高いということです。

そうではなくて、これもエリック・リース流の言い方ですが、「目標だけを決めておいて、車のナビのように常に軌道修正しながら向かっていく」スタイルで製品開発をする方が、すぐ出発できるし、成功確率が高いはずです。

何と言っても、大抵の起業家にとっては時間が何より希少な資源です。

もちろん、事業を軌道に乗せるまでのお金が限られていることも相まって、どう転ぶか分からないことに無駄な時間を費やす余裕は一切ありません。

「どう転ぶか分からない」と分かっているなら、あれこれ考えるより実験した方が早いというわけです。

心が共鳴するか?(おわりに)

今後はますます、

企業や、起業家が、いかにユーザーや顧客の心に響く言葉を発信できるか?
どれだけみんなが共鳴してくれるか?

ここが大事になってきます。

製品にどれだけ機能が付いているか?
どれだけ容量が大きいか?

等のスペック勝負では、常に熾烈な競争にさらされ、いつか勝負に負けることもあるでしょう。


私が、まだ出来てもいないエリック・リースの本にお金を出したのは、これまでの彼の考えが常に一貫しており、製品開発の過程もほとんどガラス張りの状態で共有してくれるということを知っているからであり、そして私がその姿勢に共感しているからです。

一購入者としての素直な購買心理を思い起こしてみると、「この人なら、私の求めている景色を見せてくれる」としか言いようがないレベルの気持ちがあったと思います。

かつての「力の時代」、「物の時代」、そして今まさに過渡期を迎えている「情報の時代」を経て、もう「心の時代」が来ているのを感じました。

いや、もうとっくに来てたというか、最初からそうだったのかもしれませんが・・・。

ではまた!

参考:「リーンスタートアップ」 エリック・リース著


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