人の暮らしを支えるもの (第14話 道案内)

地球を囲む複数の人

― 省吾は中学3年生の夏休み、泊りがけで遊びに来た親戚と一緒に山登りに行くことになった。しかし、省吾は山で道に迷ってしまう。途方にくれる省吾を助けてくれたものとは? ―

今日は夏休みで親戚が遊びに来ている。

これから目指す山は、標高はそれほど高くないので遠足に毛の生えたレベルだが、森は深く、迷えば危険なエリアだ。

つい先日も、近くのキャンプ場に来た客が遭難して、川に転落したというニュースがあったばかり。

入山口までは車で行き、そこからは各自リュックを背負って歩き始めた。

俺は一番後ろをついていく形だったが、夏の山は美しい。

山の斜面には色々の花が咲き乱れ、木々は緑の葉を揺らしながら光の粒をはじいている。

俺は珍しい景色を思う存分堪能しながら、のんびり歩いていた。

しばらくすると、俺は妙な静けさを覚えた。

我に返ってあたりを見回すが、視界には人っ子一人いない。

「おーい、誰かいるー?」

誰からも返事がない。

どうやら俺は、皆とはぐれたようだ。

気づけば道らしい道も見当たらず、俺はとりあえず上にのぼることを目指した。

(山登りに来たわけだから、上を目指すのは正解だろう・・・)

しばらく上っていくと、若干、平らなエリアに出た。

この山の中腹には大きな池がある。その周りには一面背の高い植物が生えており、先を見通すことが出来ない。

行くならかき分けて進むしかない。

戻ろうにも、もう今来た道も分からなくなっていた。

「遭難」の2文字が頭に浮かぶ。

途方にくれていると、どこからともなく、ブーンという音を立てながら、緑色に光る虫が飛んできた。

そいつは頭の上を、2メートルくらいの円を描きながら、ぐるぐると回っている。俺はかまわず、歩き続けることにした。

しかし、どういうわけか、俺が動けばそいつも一歩先を進むように移動し始めた。

面白がってしばらく進んでいくと、突然そいつが、また止まって旋回を始めた。

俺は少し戻って、試しに進む方向を変えてみた。すると、そいつはまた一歩先を飛び始めた。

俺は何かを感じて、そいつに、ついていくように進んだ。

そうして、道のないところをかき分けて歩いた。

30分くらい進んだ頃だろうか、急に視界が開けた。

「省吾、お前どこ行ってたんだよー」

「遭難したかと思って心配したじゃないか」

皆俺を心配してくれていたようだが、ようやく合流できた。

見上げると、先導してくれた虫は、どこへともなく飛び立っていった。

「ありがとう」

心の中で言った。

この世界には、まだ科学で理解できないことがあるんだろうな・・・。

俺はそれからというもの、虫であろうと自分に敵意のある生き物以外は、むやみに攻撃しないことに決めた。

つづく・・・

あとがき

世の中、いつ誰が、そして何が助けてくれるか分からないものです。

人間は一人では生きていけません。

直接会ったことがなくても、話したことがなくても、そして存在すら知らなくても、何かの意思や力が、私たちの暮らしを支えてくれているのだと思います。

いつもお読み頂きありがとうございます!
※この物語は、実体験をもとにしたフィクションです。


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