― 高校1年の夏、省吾は夏ばて気味だった。模試の日程は近いが勉強する気が起きない。脱力気味の省吾が、そんな時でも出来そうだと感じたことは? ―
夏は寒暖差でやられる。
外に出ればもちろん暑いが、問題はその後だ。
どこかの段階で、冷房の効いたところに入ることになる。
だが気分がいいのは最初だけで、あとは汗が冷えて逆に寒い。
冷房の効いた部屋から外に出るときがまた良くない。
プールからはい上がるときのように、一瞬体が重くなる。
これの繰り返しだ。
最近どうにも体が重い・・・
のどは渇くから水ばかり飲むが、そのせいか食欲がない。
今日も照りつけるような日差しだ。
俺は運動でもすれば腹が減るかと思い、自転車にのって、以前通っていた中学校の方まで行ってみることにした。
自転車に乗っている間は風が気持ち良い。
学校の花壇では、小さな蝶が飛びまわり、ひまわりが元気に咲いていた。
家に帰って、冷蔵庫の前でオレンジジュースをがぶ飲みしていると
「昼飯何にする?」
と父が聞いてきた。
「うーん、素麺で・・・」
一汗かいてきてが、どうも食欲は戻っていない。
素麺だけでは栄養が偏ると思うが、食べないよりはましだろう。
こんなときは、当然のように、勉強もやる気が起きない。
だが、問題はもう少しで模試があることだ。
今、自分の中では英検合格のための勉強がメインだが、夏休みくらいは他の科目をやっておかないと、追いつけなくなってしまう。
俺はさっと素麺を食べると、机に戻り、ためらいがちに数学の参考書に手を伸ばした。
「どんどん進めないと・・・」
今日こそは、新しい分野に手をつけようと思っていた。
ページを開くと早速のように、定理や公式が出てくる。
「・・・」
俺は思わず参考書を閉じた。
まったく頭に入ってこない。これは何だろう?しかし、どうにかしないといけない。
俺は脱力気味に、参考書を開きなおすと、ぱらぱらとページをめくっていた。
よく分からないが、途方にくれながら本を閉じて、また適当なところを開いたり、逆順にページをめくったりしながらボーっと参考書を眺めていた。
「そもそもこんな気分で勉強しても意味ないのかな・・・。」
だが、しばらくそんなことをしていると、あるとき、急に何か見覚えのある言葉が目に飛び込んできた。
気になってそのページをしっかり開いてみると、何か、さっきとは違う感じがする。
そのページは確か、先週くらいにやったところだと思うが、今読み直して見ると、不思議と書いてあることが頭に入ってくる。
初めて見たときは、やっぱり今日みたいに拒絶反応が出ていた気がするが・・・
面白くなって、俺は試しにそのページの例題を解いてみることにした。
明らかに、解きやすかったし、抵抗感も少なくなっている。
「これならやれる気がする。」
つづく・・・
あとがき
新しい情報を頭に入れる。
これは、こってりしたご飯と一緒で、頭に入れる前に一度噛み砕く必要があります。そうしないと入ってこないし、記憶に残らないからです。
無理に新しい情報を入れたり、勉強したりしても、結局入ってこないのでその時間がもったいないですし、そもそも精神的に無駄です。
そんな日は、
・勉強なら一度やったところを復習する、
・仕事なら、既存のプロジェクトの見直しをする、
といった形で、地盤固めにトライしてみてください。
いつもお読み頂きありがとうございます!
※この物語は、実体験をもとにしたフィクションです。
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