あなたが、起業に備えて事業計画書作りを考えているなら、
・融資を受けたい
・しっかりとした計画を立てて成功の確率を上げたい
という、外向きと内向きの目的があると思います。
そこで本日は、この目的を叶えるために、頑張れば誰にでもマネできる工夫をお伝えします。
事業計画書は3つ作る
答えは、事業計画書を3パターン作ること。
事業計画書を作るとき、まずは平均的な数値を使って基本のパターンを作るところから始めれば良いと思います。これが1パターンめです。
でも、より成功確率を上げるためにはさらにもう2パターン
・すごいうまく行く展開
・すごい悪い展開
を想定した事業計画書も作って頂きたいのです。
計画とは、未来のことを考える行為である以上、そこには不確実な要素が入っています。例えば、今後一年の売上げ推移を計画するためには、新規顧客の獲得数や、リピート率、客単価をはじめとして様々な前提となるデータが必要です。
しかし、新しいビジネスを立ち上げようという時は、どれ一つとっても、確実な数字はおろか、実績に基づく予想すら出来ません。
だから色々な統計データを探したり、同業他社の事例を参考にしたりして、一番もっともらしい数字を探していると思います。しかし、同業データをあれこれ探って平均的な数字を考えたり、自分なら毎月何件の新規客を開拓できるだろう、などと考えていると、一度は訳が分からない状態になります。
それは何故かというと・・・
予測は幅で考える
人は、何か一つの数字を当てようとすると大体外すからです。*1
ちょっと考えてみて下さい。
一年後の為替相場がいくらになっているか?と聞かれたら大抵の人は外すと思います。
でも、どのくらいの範囲に収まるか考るだけなら、当てられる気がしませんか?
例えば、今の為替レートの半分から倍の範囲にあるといった感じです。
ビジネスもこれと同じです。
所詮未来の予測は当たらないと割り切って、良い未来から悪い未来までの広いバリエーションのどこかに本当の未来があるだろう、と考えます。
その上で、どの目が出ても、ビジネスが破綻しないような見通しを立てる。
これが、3パターンの事業計画書を作る理由です。
事業計画書は何のために作るのか
次に、冒頭にもありますが、事業計画書は誰のため、なんのために書くのか?と言えば、それは金融機関などの外部の人のためでもあり、自分のためでもあります。
融資獲得のために、金融機関に見せる場合
悪い展開の計画書
もちろん、「こうなったら倒産してしまいます」というシナリオは書く意味がありません。
「このくらいひどい展開でも、なんとかなるんですよ」という資料として作ります。
とくに、自分の事業のキモとなる数値(顧客獲得コスト、リピート率、客単価等)について、業界平均や一般常識よりかなり悪い数字でも、商売が成り立つことが説明できれば安心材料になります。
うまくいく展開の計画書
売上げは最高に伸びて、コストも一番安いパターンの事業計画を作ります。もちろん、現実可能な範囲の最高の数字を使うわけですが、これで自分の事業にはこれだけのポテンシャルがあるんだ、ということを示します。
意義
3パターンの計画を作って提示することで、「計画」というものに対する、あなたの姿勢と理解を見せることができます。自分は慎重で、あれこれ考え抜くことが出来る人間です、という意思表示をするわけです。
また、融資側の立場を考えると見えてくることもあります。
金融機関は組織で融資の審査をします。あなたが実際に会う担当者は、持ち込まれた事業計画を精査し、さらに上司に説明するという作業を求められます。
もし、あなたが1パターンだけ事業計画書を持ち込んだとしたら、担当者は結局その計画を元に「最悪の展開をした場合でも貸したお金はきちんと回収できるのか?」を計算をしなくてはなりません。
人は面倒なことが嫌いです。
ですから、どうせ金融機関側で必要になる作業なら、一手間でも、担当者が楽になるような用意と気遣いをすることで、スムーズにコトが運ぶ可能性が上がります。
もちろん、そういった気遣いが出来る人なら、商売をしても色々なところに配慮が行き届くだろう、という評価も受けるでしょう。
自分のため
事業計画書は誰かに見せることだけが目的ではありません。3パターン作ることが、自分の事業についてよりよく考え、起業の成功確率を上げることにも繋がります。また、意外な盲点に気づくことが出来ます。
悪い展開の計画書
最悪どうなる?を考えます。
・売上げがなく、固定費だけが出て行ったら、黒字転換までどのくらいの時間の猶予があるのか?
・どうなったら事業の根本的な見直しが必要か?
・いつ判断すれば、最悪の結末を避けて撤退できるのか?
悪い展開を想定することで、自然とこういった疑問が湧いてきます。
対応策を事前に持っていれば、悪い展開になっても、ならなくても、安心感を持って経営を進めることができます。
さらに大変ではありますが、全体の売上げの数字だけでなく、売上げを構成する要素である、客数、客単価、リピート率等を分けて、それぞれの数字が悪くなったらどう対応するか、問題を切り分けて考えておくことができます。
費用についても、顧客獲得にかかる費用をはじめとして、原料の高騰などが発生した場合にどう対応出来るのか?どのくらいまでの変化なら耐えられるのか?など見ておきます。
うまくいく展開の計画書
「うまくいけば嬉しいに決まってるんだから、書く必要ないでしょ?」
そう思うのは間違いです。
客数が増える、販売数量が増える、という状況でも、経営者には厳しい試練が待ち受けています。
・大口の注文が入ったはいいが、仕入れの代金は調達できるのか?つまり資金繰りは大丈夫か?
・生産、供給は間に合うのか?
・作業時間は計算上足りるのか?それは現実的か?
・生産性を高めるにはどうするべきか
等、成長著しい会社ほど、乗り越える壁も多いものです。
どんなにチャンスが巡ってきても、準備をしていない限りその恩恵にあずかることは出来ません。
うまくいく展開の計画書を書いてみることで、将来急成長したときに何が必要になるかをシミュレーション出来るわけです。
また、高い目標を立てている時はモチベーションが上がります。たとえ計画でも、すごい順調な数字を表計算ソフトに打ち込むだけで、ドキドキしませんか?
遠慮は無用です。ここは思い切った数字を入れてしまいましょう。
1パターンだけの普通の計画を達成しようと思っている状態に比べ、どうやったらその「最高の目標」が実現出来るだろう?と日々考えていれば、自分とビジネスを高めて行くことが出来ます。
まとめ
事業計画書は3パターン作る!
これは金融機関などの外向きの目的にも、そして起業を確実に成功させたい!という内向きの目的にも力を発揮します。
是非もう一頑張りして、成功をつかんで下さい。
ではまた!
*1 「決定力!」チップ・ハース&ダン・ハース著 第10章を参照