集中力を鍛えたいなら、座禅を組んだり、滝に打たれたりする以外にも道があります。
しかも、今回ご紹介するのは自分が大好きなことをやりながら集中力を高めるための訓練法です。
集中力とは何か
集中の根本は、自分のエネルギーを「今この瞬間」にどれだけ濃く注ぎ込めるか、ということです。
集中力を鍛えることのメリットは計り知れません。
よく、勉強は質と量のどちらが大事なのか、という議論が出ることがあります。もし質だけを考えるなら、集中力こそが勉強の質のキーファクターではないかと思います。
同じ時間をかけても注意が散漫な状態では、成し遂げられる量にも違いが出てきます。さらに、仕事でも、資格試験でも、集中力の違いが天と地ほどの差を生むことがあります。
是非はともかくとして、仕事は結果で評価されることが多いですし、勉強でも、試験という限られた時間内に結果を出せなければアウトです。ほんの1点足りないだけでも不合格は不合格です。
限られた時間内に成果を出すためにも、より上を目指すためにも、集中力は現代人が日々鍛えて行くべき最重要スキルと言えます。
集中力は我慢ではない
集中力とは、決まった時間どれだけ我慢できるかということではありません。あなたが望むのは、「集中しなきゃ! 集中! 集中!」などといって勉強に取り組む姿ではないはずです。
理想的な集中状態とは、目の前のことだけに、自然な形で全エネルギーを注ぎ込んでいる状態、しかもそれ以外の事は一切意識に上らない状態です。しかし、仕事や勉強だけに取り組みながら、この集中力を鍛えていくのは難しいことです。
実は、このプロセスには
・我慢する
・集中力をつける
という2つのステップが紛れているからです。
もし、あなたが仕事も勉強も、楽しんでやっているなら、いちいち集中力のつけ方に興味など持たないはずです。集中力をつけるだけでも一大テーマなのに、我慢という余計なステップを増やしたら手に負えません。
勉強や仕事以外のことは極力我慢しなければいけない、と思っているならその考えは捨ててください。大事なのは集中している状態を繰り返し、あなたの頭の中に集中状態の思考回路を作ることです。それは、どんなことでも、脳からすれば集中していることに変わりは無いからです。
集中するという状態はどんなものか、まず頭と体で覚えてから、仕事や勉強にも応用するのが近道です。だからこそ、好きなことをして集中力を鍛えるところから始めるのがお勧めです。
好きなことをして集中力を鍛える方法
まず、5分程度の好きな(本当に大好きな)映像 音楽、そして誰にも邪魔されない環境を用意してください。誰にも邪魔されず、自分が気にならないなら自分の部屋でも、電車の中でもかまいません。もちろん、長いコンテンツでもOKですが、最初は短いほうが高い集中力を維持する訓練としてはお勧めです。
ひとつのことに集中する
あとは、再生してコンテンツに完全に浸り切るだけです。これを毎日繰り返してください。朝起きた後、移動中のスキマ時間、寝る前などいつでも大丈夫です。
このとき、大事なのはその見方、聴き方です。
映像ならどうしてその展開になったのか、監督や脚本家の意図を考えたり、さりげない仕草の裏にどんな心の動きがあったのか考えたりして、より深い見方をします。
音楽なら歌詞や音色から、思いつく情景を頭のなかに描く、歌声だけを一字一句追う、歌詞の意味だけを考え続ける、といった形で聴きます。
意識してこの訓練を続けていくことで、ひとつのことだけに意識を注ぎ込むという状態はどういうものか、頭と体に刻みこんでいくことができます。
より早く、集中状態に達する
もし、一回再生してもう一度見たい、聴きたいと思ったら時間の許す限り何度でも再生して没頭します。普通なら同じ1曲を繰り返して何度も聴くようなことはないと思いますが、これが効きます。
だから、何度も見たり聴いたりしたいと思える、本当に大好きなコンテンツを用意することが大切です。たとえば、好きな曲がたくさんある場合も、今聴きたい!と思えるもので訓練します。
ひとつの映像、曲を繰り返し再生していくことで、頭の中で、回を追うごとに、その世界についての情報が詳しくなり、深くなっていきます。1回目よりも3回目の方が、聴き始めてからその世界観について深く考え始めるまでの時間が短くなっていくのに気づくでしょう。
これを繰り返すことで、より短時間で深い集中レベルに到達するための思考回路が強化されていくはずです。逆に、没頭し始めるまでの時間が延びていくようになったら、一旦訓練を切り上げてください。
少し飽きてきたところで、さらに集中力を長時間持たせるための訓練は、また別の機会にお話したいと思います。今回の訓練法で目指すのは、あくまでも早く、深く集中することです。
訓練の終わりに
訓練を終えた後には、簡単でも振り返る時間を設けてください。
呼吸はどうだったか、どんなことを考えていたか、何が見えていたか、どのくらい時間がたったか、今の気分はどうか・・・等です。
「呼吸についてまったく意識していなかったし、電車で立っていたのに周りの景色は見えていた気がしない。ただ、聴いていた歌詞に出てくる駅の情景だけをずっと考えていた。あっというまに15分経過していて、今は寝て起きたようなとても爽快な気分だ。」
こんな感じになれば相当上達しています。
まとめ
今回は、大好きなことに没頭して集中力を鍛えようという内容でした。
禅の世界の言葉で、歩々是道場(ほほ これ どうじょう)というものがあります。私は、心の持ち方次第で、どんな場所でも、どんな動作も、自分を磨くための道場となるという意味に解釈しております。雑念をはらい、今だけに集中する技術は、好きな映像を見たり、音楽を聴いたりすることでも鍛えることができるという意味に展開してもいいと思います。
この訓練を続けていけば、集中力はもちろん、様々な視点からものを見る観察力、明示されていない作者や演者の意図を探る洞察力、 目に見えない情景を描くための想像力など、様々な能力を鍛えることも出来るというおまけ付きです。
敷居は低く、誰でも簡単に始められる訓練ですが、意外に奥が深い世界を楽しむことができるはずです。
是非、今から試してみてください!