面白い記事を見つけました。ブレインストーミングは機能しない(Brainstorming Does Not Work)という記事です。
前々からそんな気はしていたのですが・・・
早速ハイライトを見ていきましょう。
二つの研究が崩したブレインストーミングの前提
仮説その1:グループの方が、個人より多くのアイデアを出せる。
One assumption is that groups produce more ideas than individuals
ミネソタの研究者が3Mと共同で実験したところ、個人でアイデア出しをした場合の方が、グループでやった場合より、30~40%多くのアイデアを出した。しかも、クオリティも個人でやった方が高くなった。(実験と関係ない独立した審査員による評価。)
さらに、5人、7人、9人といった様々なグループ規模を変えた実験をしたが、1人でのアイデア出しが優れるという結果がでる。
しかも、グループ人数が増えるほど、生産性が落ちていったとのこと。
“Group brainstorming, over a wide range of group sizes, inhibits rather than facilitates creative thinking.”
結論:グループでのブレインストーミングは、様々なグループサイズに渡って、クリエイティブな思考を促進するどころか、妨げる。
仮説その2:アイデアが出る度に評価しない。判断作業は後でやる方がいい。
suspending judgment is better than assessing ideas as they appear
インディアナの研究者が、批判OK、批判NG、の二つのグループでブレインストーミングする実験をしたところ、良いアイデアの数は双方同じだった。
だが、批判NGのグループはダメなアイデアの数も多かったとのこと。
普通、ブレインストーミングは多くのアイデアを出すことが主眼です。そのため、アイデアの流れを止めないよう、誰がどんな突拍子もないアイデアを出したとしても、イイネ!といって次に進むルールになっていると思います。
この研究によれば、そんなルール関係ない、ということになりますね。
以上、研究結果のハイライトです。
会議が無駄になるのと理屈は同じか
なるほど・・・。
みんなで集まってブレストやろう!とかいって結局何も成果らしきものが出ないことも
ブレインストーミングは会議のやり方の一種なので当然といえば当然ですが。
私も仕事がら、「会議」とか「ミーティング」、「お打ち合わせ」といった集まりに参加することが良くありますが、参加する前から、この会議は何も生まないだろう、と分かる場合すらあります。
最悪なのは、「来週水曜日の午後1時、お時間を頂けないでしょうか?」的な集まりです。会議の人選やこれまでの経緯からなんとなく議題が想像できるにしても、結局具体的な内容と、この会議で何を達成したいかという目的がないからです。
私は、会議に参加する人が事前に各自の準備をしてこない限り、会議は時間の無駄になると考えています。何人もの人間が、1時間、2時間と使えば、それだけで何十万円という機会損失が発生するのに、軽はずみに会議を設定してはいけません。
各自が議題についてしっかりと内容を把握し、共通のゴールを共有していれば、議題にそって「決めていく」ことができます。
あーでもないこーでもない、という意見が噴出して時間切れになる会議ではなく、その話は目的の実現に関係あるのか?だけにフォーカスした会議に出来るからです。
ブレインストーミングの為にあつまるとしても、「ブレインストーミングのための、ブレインストーミング」を自分で一回やっていく、みたいなことが必要になるわけでです。
そして、集まったときには自分で下準備した内容をもとに、さらにそこから発展させていくというやり方が良いかもしれません。
普通に考えれば、参加者の意識、ある案件に関する知識の量などは人によりばらばらです。それなのに、ある日いきなり集まって、「さあアイデアを出そう」となっても、アイデアが出てこない人も多いでしょう。
それなりのINPUTがなければ、OUTPUTは出来ないからです。そうなると、「誰々ばかりアイデアを出している」とか、「誰々が集中していない、アイデアを出していない」みたいなことになって、チームの士気が下がってしまうという最悪のシナリオもあります。
そういうわけで、結局人が集まって何かをしようとするなら、事前に目的を共有しておくことはもちろん、現場で初めて考え始めるのではなく、各自の事前準備が欠かせません。
ブレインストーミングに影響を与えるその他の要素
さて、ここまではみんなでブレインストーミングをするより、一人でやった方が断然いい、という路線でしたが、ちょっと目線を変えてみます。
今回参照した実験は、アイデアの数や質、グループ人数、批評の有無を軸にしていますが、それ以外にもブレインストーミングに影響を及ぼす要素があります。
例えば人選です。
グループの人選という要素を考えたとき、研究結果に影響がでるか?
ちょっと気になります。
声の大きい人、社内での力が強い人が参加するとブレインストーミイングの結果に影響がでるのは簡単に想像できます。
ブレインストーミングの目的が、自然体のアイデアを豊富に出すということなら、まずは参加者の人選から徹底する必要があるということでしょう。
しかし、人選を人間がやるならそこに恣意が紛れ込む可能性もあるので注意が必要ということになり、ブレインストーミングのグループ作りは想像以上に困難になるはずです。
また、今回ご紹介した実験の前提では
「良いアイデアをたくさん出せること」=「優れている」
という視点に基づいているので、グループでのブレインストーミング=ムダという結論になっていますが、
もし、ブレインストーミングが違う目的や効果をもっていたら?
そう考えると、違う結論が得られる可能性もあると思います。
でも・・・ブレインストーミングは素直に楽しい
その可能性の例をいくつか考えてみます。
ブレインストーミングがアイデアをたくさん出すことに効果が無くても、ちゃんとしたグループでやれば、ブレインストーミングは楽しいですよね。
これは間違いないと思います。(あくまでちゃんとした人選でやった場合ですよ)
ブレインストーミングをする段階というのは、まだゴール以外決まっていない、ぼんやりとした状態です。すなわち、「希望が一番あふれている」状態という意味です。
これからすごいアイデアがどんどん出てきて、ロードマップが見えて、頭の中で目標へ向かってぐんぐん進んで行くことができるという段階です。
簡単に言えば、この「わくわく」を、然るべき仲間と共有するというのは楽しい経験です。自由に食べ物でも持ち込んでワイワイやれば、もうずっとブレインストーミングしていたいくらいになりますよね。
しかも、ブレインストーミングのルールとして、批判禁止、前向きなフォローのみ、といった制約の下やるので、グループを前向きにまとめ上げる力が強まるでしょう。
あるいは、効率がわるいと思っても、あえてエースプレイヤーからルーキーまで集めてブレインストーミングをすることで、チームの意識や足並みをそろえる効果もあるでしょう。
キックオフミーティングなどのケースに限ってチームビルディング活動の一種と思ってやれば、ブレインストーミングには相応の価値があるはずです。
おわりに
ブレインストーミングは、ムダなんじゃないか?
あなたも、経験的にそう考えたことがあると思います。
でも誰もがそう気付きながら、社会から根絶されないのには理由があるはず。
ブレインストーミングには「クリエイティブなアイデアを多く出す」という当初想定された視点を超えた効用があるのかもしれないということです。
誰と使うか、どんなケースで使うか?
ブレインストーミングはツールである以上、使い方をしっかり考えて使っていけばいいと思います。
私もこの記事を読んだからといって、もうブレインストーミングを止めるということもない気がします。
ではまた!
*出典:Brainstorming Does Not Work by Kevin Ashton