今回は英語塾の経営者になったつもりで考えてみて下さい。
いくつかビジネス上の選択肢があって、迷うことはあります。
例えばこんなとき、あなたならどういう基準で考えるでしょうか?
[設定]
英語塾で新しいコースを作りたいが、初級向け、中級向け、上級向けの3タイプで迷っている。
・初級者向けコース
需要も多く、生徒さんの確保がしやすいので失敗の確率も低い。しかしレッスン料は相場並みにするしかないだろう。成功した場合、このコースが生み出してくれるお金は1,500万円くらいになる見こみだが、教材費や人件費を始めとして、失敗すれば500万円は失うだろう。
・中級者向けコース
うまくいけば初級コースより、実りは多く2,500万円くらいになる。だが、初級向けに比べて需要が減るため、成功の確率も若干下がるはずだし、教材や講師陣のコストも上がる。うまくいかなければ750万円の損失になる。
・上級者向けコース
当たったら一番大きいのは、上級者向けコースだ。しかし、対象客はマーケット自体が小さく、軌道に乗せるのに苦労するだろう。
教材作成も専門的なものが必要だし、レベルの高い講師の確保、教育もコストがかかるため失敗の損失は1,000万円と桁違いだ。だが、成功の暁には4,000万円は稼げるだろう。
自分としては、高単価のコースをやってみたい気がするが・・・
うちの塾にとって、最も利益を生んでくれるのはどのコースなのか?
社長、ご決断を!
期待値とはどういう考え方なのか?
そこで出てくるのが、期待値という考え方です。
さらっと、おさらいしてみましょう。
ある行為を繰り返した場合、結果的に1回あたりの結果はどうのような「見込み」になるか?
これが、期待値の意味するところです。
例えば、
コイン投げをして、
表が出れば2万円もらえる
裏が出たら1万円払う
というギャンブルがあったとします。
表が出る確率も、裏が出る確率も50%なら、期待値は5,000円です。
この5,000円という数字はどこから出てきたのか?
試しに、コイン投げを10回繰り返した場合を想像してみてください。
このゲームを10回やると、
・うち5回は2万円もらえるのでプラス10万円。
・うち5回は1万円失うのでマイナス5万円。
10回トータルすると5万円のプラスです。
1回あたりの金額を出すために、5万円を10で割れば5,000円です。
これが期待値を考える上での、基本形です。
今回のケースの期待値
期待値を計算するには3つのコースの成功確率を設定する必要があります。
ここでは、
初級60%
中級50%
上級25%
とします。
設定もあわせて表にするとこうなります。
すると、期待値は中級コースが875万円のプラスで、最も高いことが分かります。
設定が現状通りなら、中級コースを新設するのが、一番理にかなっているということです。
逆に、上級コースは成功時の見返りは大きいものの、失敗の確率が大きすぎて割に合わない勝負だということです。
漠然と悩んでいる時に比べ、かなり霧が晴れてきました。
確率はどう計算するの?
ところで、成功の確率ってどうやって出すの?
と思われたあなたは鋭いです。
大事なのは、ある打ち手がどのくらいうまくいくか、「確率」が分かることですが、
どんなに計算しても、やる前から正確な確率をつかむのは困難です。
そんな時は、勘でいっても悪くないと思います。
初級向けは悪く行く予感はしない→60%
中級向けは五分五分かな?→50%
上級向けは2,3割の確率だろう・・・→25%
なんといい加減な?
というかもしれませんが、期待値の計算を試みないよりはましです。
大事なのは、仮説を立てることだからです。
例えば、自分としては上級向けの英語コースがいけると思っていたのに、結果的に一番期待値が低くなっています。
そこで、何故だろう?
どうしたらもっと期待値が高くなるだろうか?
などと色々な疑問を出すことにも意味があります。
自分はどうしても上級者向けの英語のコースをやりたいと思っているがどうしたらいいのか?
と考えるなら、そこで、成功時の利益が少ないのが原因、すなわちリスクに見合うリターンがないことが原因の一つだと気づくでしょう。
それなら、本当に最上級の国際人材育成を視野にいれた、スピーチ、プレゼン専門の総合クラスを、エグゼキュティブ向けに、よりハイプライスで提供するならどうだ?
といったアイデアが出てくるかもしれません。
このように、
成功時の利益を上方修正できれば、上級コースが一番の有望株になります。
あとは、価格設定などを見直し、どんなコース設計にすれば上級者向け、かつエグゼキュティブ向けの内容になるか考えていく、という具体策に着手することができます。
思考のツールとしての期待値
期待値計算はあくまで正解を導き出す方程式、というよりは、今の課題をより小さく、着手可能なものに切り分けていくための思考ツールとして使ってみるのが良いかもしれません。
決めかねていることがあれば、是非、期待値を比較してみてください。
ではまた!
注意すること
期待値を考えるなら、たまたま一回やっても、それこそ「期待」通りにはならない可能性に注意が必要です。
同じ戦略を繰り返し展開していくことで、結果がトータルで期待値に近づいていきます。
だから、期待値の計算を事業計画に用いるなら、十分な数のトライができる規模の打ち手を、繰り返し出していくことを前提に考えるべきです。
もっと簡単に言うなら、ビジネスはギャンブルではないので、一回の失敗で全滅するような戦略は打たない方が良い、ということでもあります。