後悔したくないなら行動あるのみ (第39話 新歓)

走りだす人達 ストーリーでわかる自由の作り方

― 大学のキャンパスは新入生歓迎シーズンに沸いていた。省吾はサークルを物色しながら、毎夜行われる新歓パーティーに端から顔を出していた。 ―

 

新入生歓迎シーズン。

それは、とにかく新入生というだけで、日々開催される各サークルや部活の新歓パーティーに無制限に出入りできる、すばらしい期間だ。

 

受験までは狂ったように勉強していた連中が、今は常軌を逸した羽目の外し方をしている。

「やるときはやる、遊ぶときは遊ぶ」を地で行っている人間がかなりいるようだ。

 

俺も一度は本気で勉強以外のことに取り組もうと考えていた。

ただ、大声を出してはしゃぎ回るわけではなく、一人静かに自分のやりたいことがないか探し歩いていた。

 

今日の行き先は、ある軽音サークルの新歓コンパだ。

 

会場に入ると、奥に白いマーシャルのアンプを積み上げてあるのが見える。

さすがに、音量だけはでかい。

話す声も聞こえないくらいだ。

 

入り口でもらったサークルの資料を見ながら、先輩方の演奏を聴いていると

ふと、壁に寄りかかって手持ちぶさたにしている人に目が行った。

 

短い髪に、レースで編んだような長い丈のショールを肩にかけている、

今まで俺が出会ったことがないタイプの女性だった。

 

一瞬迷ったが、今日は俺も気が大きくなっていたのかもしれない。

どうしても気になって、声を掛けることにした。

 

「こんばんは! これ、飲まない?」

「あ、有り難う。」

俺はそこら辺にあるドリンクを二人分もって近づく、という古来より伝わる作戦に出た。

 

「すごい盛り上がりだね、省吾と言います。 はじめまして!」

「はい?」

 

「あ、俺の名前。 省吾、って言います。」

「ごめんごめん、うるさすぎて聞こえなかった。」

「あ、私チカって言います。」

 

自己紹介が済むと、俺は安心して少し笑顔を見せた。

「チカさん、このサークルに入る?」

「まだ、わかんないな・・・」
「私、他の大学の学生なんだ。このサークルは他大学も受け入れてるから、見に来たんだけど・・・。」

 

「そっか、俺もまだ分からないんだけど、この後別のコンパでも物色する?」

「今日はもう少ししたら帰らないといけないんだ。実家から通ってるからさ・・・」

 

その後、どうでも良いような会話を続け、チカさんが帰るというので入り口まで見送った。

おれは軽く手を振ると、彼女は軽く微笑んだように見えた。

 

つづく・・・

photo credit: billadrian96 via photopin cc

あとがき

何か思うことがあれば、自分に正直になって行動してみる方が、後になって納得できることが多いような気がします。

結果はさておき・・・ですが。

 

心に思ったことを押し殺すと、あとで、「どうしてやっておかなかったんだろう?という気持ちになっても対処できません。

もう、その場に戻ってやり直すことが出来ないからです。

 

まさに「後悔」です。

 

あの時こうしていたら・・・

と悔やまないためには、とにかく行動を起こすことです。

だめだったとしても、それは一つの答えが出たことには違いありません。

また次のチャンスがありますよ!

 

いつもお読み頂きありがとうございます!
※この物語は、実体験をもとにしたフィクションです。

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