― 中学1年の時、簡単に英検3級に合格した省吾は、2年になると英検2級を目指すことにした。意気揚々として英検2級の問題集を買ってきた省吾だが、そこには新たな壁が立ちはだかっていた。 ―
「さてさて、英検2級とやらは、どんな感じかな?」
早速適当なページをめくると、いきなり見たこともないような長文が現れた。
もう自分の、基本的な英語レベルでは歯が立たなかった。驚くには驚いたが、素直に上には上があるもんだと思った。
とりあえず、出てくる単語が分からなすぎて話にならないので、まずは単語や言い回しから覚えていくしかないだろう。
こうなると、もう少しまじめに勉強することを考えるべきなのか・・・
英語は好きで勉強していたつもりだが、確かに、毎日毎日勉強しているわけでもない。
「もうやるしかない。とりあえず単語帳からやってみるか。」
しかし、机に向かっていられるのは30分が限界だった。
今までやっていた英語勉強法は、簡単なストーリーを読んだり、絵のついた単語カードを見るといったものだ。(第10話参照)思い返せば、1回の勉強は15分前後で済んでいた。
「そうか、今まで俺は長時間勉強したことなんかなかったのか・・・。」
俺は、その発見に妙な気持ちを覚えながら、自分の前に立ちはだかる壁は、英語ではなく、自分との戦いだということに気づいた。
「どうしたら壁を越えられるだろうか?」
俺はある週末、今日こそ3時間勉強してみると決めた。
3時間後・・・
一応は3時間の間、机に向かっていた。
だが、単語帳や問題集の進み具合は30分勉強した時と大差がない。
「これでは、文字通り机に向かっているだけだな。」
3時間の行動を思い返すと、何度も机を離れていた気がする。
(のどが渇いていちいちキッチンまで水を飲みに行ったな。何回くらい行ったんだろう・・・。机に座っていたとしても、飽きてくると視線がそれて、本棚の漫画が目が行くこともあった。この3時間の間に、漫画のストーリーの続きのことを結構考えていたような気もするし・・・。)
要するに、ほとんど集中できていなかった。
最初の30分前後で何か別のことに意識が逃げてしまう。
「この30分をどうにか乗り越えないとだめだ。」
とりあえず、俺は今回の反省点から、机のそばに十分過ぎるほどペットボトルを置いて逃げ道を断つことにした。もちろん、漫画も目の届かないところに移動した。
もう3時間にトライする意味はなかったので、次は単純に30分の壁を越えることだけに集中した。
結果として、飲み物があるだけで相当落ち着いていられることが分かった。30分だけではなく、1時間は勉強できるようになった。
集中力が途切れそうになると、やはり何か別のことをしたくなる。そんな時、やけにのどが渇いたりするが、そこでさっと手元にある水を飲ませてやれば、一時的に気持ちが満足するようだ。
つづく・・・
あとがき
実際、水は大事です。
人間の体はほとんど水分で出来ています。
水分補給と脳の働きに関係があるという研究(英文)もありますし、いつでも近くに水があるという環境は、動物としての人間に、落ち着きを与えてくれるのかもしれません。
集中して作業に取り掛かるときには、邪魔になりそうなものを排除しつつ、しっかり水分を確保して臨んで下さい。
いつもお読み頂きありがとうございます!
※この物語は、実体験をもとにしたフィクションです。
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