― 省吾は地元を離れ、私立高校に入学した。別に有名な進学校というわけではなかったが、難関大に入学する生徒も毎年何人かはいた。省吾は地元の高校に通うより、かなり良い選択だと思っていた。 ―
「はい、この文は、この部分がSVCの第2文型で、which以下のところが関係代名詞節、という構造ですね。」
最初の英語の授業でいきなり英文法の説明が始まった。
中学校のおさらいも含めて、ということだが聞きなれない言葉ばかりが出てきた。~~文型だの、~~代名詞だの、文法用語が分からなすぎて焦った。
そういえば・・・
俺はまともに中学校で英語の授業を受けた記憶がない。
中学校ではクラスの大半が勉強に興味がなかった。
授業中も漫画を読んだり、居眠りをしていたり、ひどい時にはテスト中にスーパーマリオの音が聞こえてきたこともあった。
特に寒い日などは、イスが冷たいのでイスの上にまず手を置いて、その上に座っているやつもいた。もちろん、両手がふさがっていれば勉強どころではない。
そんな環境が俺にはむしろ功を奏したのか、独自の世界を進んできたようだ。英語の勉強は好きでやっていたが、それは学校の授業とはまったく関係なかった。
高校には入ったものの、英文法をまともに勉強したことがないことにいまさら気づく。
だが、英語の文法を学んだことはなくても、英検2級までは受かっている。そんな不思議な状態だった。
「次は別の文型で試してみましょう。」
授業を聞いていけばいくほど、どうしてそんなややこしい方法で英語を読む必要があるのか理解できなかった。
もう俺は授業を聞いていなかった。
ふと視線を窓の外に向けると、
校庭では、桜の花が風にゆれている。
英語を始めたときに使っていた教材(第10話参照)のおかげで、俺は英語を、英語の語順のまま読んでいく癖がついていた。
内容を理解することだけに専念していたので、日本語に訳さなくても、映像的に理解できればそれで問題なかった。だから、日本語に訳すとなると、非常にぎこちない日本語になるのが弱みだったが・・・。
これから目指す受験勉強ではどうなんだろう?
文法を熟知していなければ通用しないのか?
俺はかなり不安になった。今まで順調に進んできたと思っていた英語の勉強だが、いまさら方法が違うと言われても困るからだ。
それからしばらくして、校外模試があった。
だが、やはり文法のことが分からなくても、問題は解けた。
これはこれでいいのかもしれないな。
このまま自分のやり方で続けていこう・・・
つづく・・・
photo credit: acroamatic via photopin cc
あとがき
日本の英語教育というのは、どこかしら無茶があるような気がします。
ネイティブの人たちは言葉が出てくる順に英語を理解しているのに、ネイティブでない我々が、文章を行ったり来たりしながら訳していたら、対等のコミュニケーションなど無理な話です。
英文法の授業は、あくまでも英語を「日本語脳」で理解するための仕組みだと思います。
しかも、「返り読み」など、古来からある漢文の読解方法と同じような仕組みが採用されています。いつこの読み方が出来たかわかりません。遣唐使の時代からだとしても軽く1000年は変わっていないのではないでしょうか?
英語と日本語では、語順などの構造が決定的に違うのは確かです。
だからこそ、日本語のフィルターをいちいち通して理解する方法ではなく、まずは英語を英語のまま理解するためのカリキュラムが必要だと思います。
いつもお読み頂きありがとうございます!
※この物語は、実体験をもとにしたフィクションです。
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