覚える情報が多すぎて困る!
それは本当でしょうか?
試しに記憶術の代表選手である、ゴロあわせを考えてみてください。例えば、
「鳴くよ(794)ウグイス平安京」
という日本史の語呂合わせで、西暦794年に、日本の首都が平安京に移ったことを覚えた記憶はありませんか?
確かに、年表をみて「西暦794年 平安京遷都」を覚えるよりはるかに頭に残ります。しかし、ここで注目したいのは、本来覚えるべき内容より、語呂合わせで覚えるほうが情報量が増えてしまっていることです。
「西暦794年 平安京遷都」という11文字を覚えるために、きれいな緑色のウグイスが鳴くところを思い浮かべたり「ホーホケキョ」という泣き声を想像して、最後の「キョ」の音が平安京の「京」と韻を踏んでいると考えたりと、かなり覚える情報が増えてしまっています。
記憶術の手法をいろいろ見ると面白いのは、覚えるための情報をむしろ追加しているものが多いということです。
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記憶術とは何なのか?
今回は、記憶術の基本を構成しているものは何なのか考えてみます。
上の例のように、記憶術の基本は、そこに「別の意味をつける」ということだと思います。人間は、あらゆる物事に意味をつけたがります。意味がついていないものは理解できないからです。そして、理解できないもの、分からないものは人間にとって突き詰めると恐怖の対象になります。
だから、人間は分からないものに出会うと、「これは何だろう?」と思って、既に自分の中にある情報を総動員して必死に理解しようとします。
目の前にはじめて見る生き物が現れたとき、やわらかそうで、小さくて、か細い声で鳴いているなら、ほかに見たことがある動物の赤ちゃんのことを思い出して、保護しないといけないかな?と考えます。
それは同時に、その弱そうな、生き物が、毒を持って噛み付いてくるような危険はない、と考えて受け入れることでもあります。
もちろん、完全な正解がでなくても、自分で分かったと感じられる状態になれば(分かった気になれば)恐怖心は消えます。記憶術はその性質の応用ではないでしょうか?
記憶術の極意
分からないものは潜在的な恐怖の対象なので、人間の本能を考えると「戦うか、逃げる」という反応になります。だから無機質な数字の並びなんかは非常に覚えにくく、頭に入ってこないのかもしれません。
では「分かる」とはどういうことかを考えると、既に自分の中にある情報や、今もっている知識や考え、感じ方の組み合わせで、目の前のものが説明できる、ということだと思います。そうやって、知識や情報をつなげて増やしながら、理解の幅が広がっていきます。
自分で分かったと思えることなら、受け入れることができる。持っている情報が多ければ多いほど、新しい情報を説明する方法も増えて、情報を記憶しやすくなる、ということです。
記憶術の極意は、情報を付け足し、関連付けるということだ思います。
小手先の記憶術は邪道か?
新しい情報を頭に入れたいなら、今、自分の中にある情報を使って、その新しい情報に意味をつけていくのが記憶術の基本です。
自分にとって意味を持つ状態になるまで、出来る限り色々な情報とリンクさせたほうが記憶しやすくなります。
面白いのは、その関連のさせ方は本当に自由だということです。
難しい数学の公式など、どうしてもわからないものには意味がつけられないこともあります。そんなときは、
「その公式を絵に見立てたら、何の形ににている?」とか
「頭文字だけつなげて読んだらどんな音になるかな?」
といったように、本当の意味とまったく関係ないものから連想しても、覚えるだけなら出来てしまいます。
最初はそんな覚え方でも、頭に入ってこないよりはましだと思います。覚え方はさておき、使っているうちに、それが本当の理解に変わるときもあるはずです。
まとめ
記憶術は既存の知識を駆使して、覚えたいことに情報を付け足し、関連付けて、意味をつけるテクニックです。
年をとっていくにつれて、脳は新しい情報を拒むようになる気がします。しかし、既に頭の中にある知識で理解できるものなら、比較的簡単に受け入れてくれます。
記憶術は暗記するだけの技術ではないと思います。その基礎をみれば、新しい情報を、自分の中に浸透しやすいかたちで、しまっていく技術ではないでしょうか?
そうやって、大人になっても新しい知識、情報を広げていけるのだと思います。
記憶術については、細かく見ていくと色々なテクニックがあります。もし、英単語でも宅建の条文でも、覚えられないものがあれば、まずは自分の中にある情報、知識、匂いや音などの感覚も含め、いろいろなものと関連付けて、自分の頭が受け付ける形にしてみてはどうでしょうか?
いつもお読み頂きありがとうございます!