― 英検1級に受かると、省吾は通っている高校から特待生の認定を受けた。鉛筆一本で授業料を稼いだ省吾は、そのとき何を感じたのか? ―
英検合格のおかげで、俺は2年生以降、特待生扱いにしてもらうことが出来た。
要するに授業料が全て免除になるということだ。
学校はその分、俺の成績を新規募集の宣伝材料にするわけだ。
ほとんど自力で勉強して合格しているのに不思議な気もしたが、それはどうでも良かった。
実際、英語以外の成績は大して良くないのに、特待生の申請を通してくれただけありがたい。
去年、適当な皮算用で親を説得して英語スクールのレッスン料を用意してもらったが、(第21話参照)今思えばそれも安い投資だった。
もう一回試験に落ちていれば、このタイミングで特待生の認定を受けることはできない。
何より、勉強だけでカネを稼ぐという体験が出来たのは驚きだ。
「勉強は何の役に立つのか?」
というお決まりの質問に対して、俺はいつも「考える力、生き抜く力をつけるため」と考えていたが、こうも具体的で現実的な効能もあると分かったからだ。
高校生の俺にとって、2年分の私立高校の授業料の金額は結構な大金だ。
ゼロから何かを生み出すということが、少しだけ分かったような気がした。
つづく・・・
photo credit: Eva the Weaver via photopin cc
あとがき
「金ができたら、起業する。」
そう言って、もう10年も起業しない人を知っています。
起業でも、副業でも、ビジネスを起こすならあなたは社長です。創業社長の仕事は、多かれ少なかれゼロから何かを生み出すことですが、ここにはトリックがあります。
実際にゼロだったら、そこから何かが出てくることは無いでしょう。ゼロに何を掛けてもゼロです。
「ゼロから1を生み出す」と言ったとき、その「ゼロ」は本当に何もない、ということではありません。
「認識できる形としては、まだ何も存在していない状態」という意味です。
今はまだこの世界に、形として現れていなくても、
・あなたの頭の中にあるアイデア
・そのアイデアで問題を解決し、夢を叶える未来の顧客
・あなたが生まれ持っている日々の時間
・あなたが働きかけることで賛同してくれる人たちの時間やお金
こういった存在に気づき、自分のアイデアに沿って関連づけ、形にする。
これが、ゼロから何かを生み出す、ということの具体的な内容です。
お金というのは、人々の信頼や欲望といった思考や、時間、モノ、可能性のエネルギーが、たまたま紙幣や硬貨という形をしているに過ぎません。
エネルギーというのは、スピリチュアルな意味は一旦置いておいて、
「何かを動かすための燃料」だと考えてみてください。
あなたの中に、あなたの周りに、きっと何か、まだ形として現れていないエネルギーがあるはずです。
もちろん、庭に温泉が湧くとか、石油が出るというのが一番具体的でわかりやすい話ですが、あなたの成功体験、失敗体験といった概念的なものだって立派なエネルギーです。
あなたの成功体験を聞いたことで、誰かが勇気を持って前に進むこともあるでしょうし、失敗体験によって誰かの進路をよりよい方向に変えることもあるでしょう。
あなたから出たエネルギーが、モノでも、人の心でも、何かを動かす燃料になるなら、お金は結果としてついてきます。
歴史をみても、お金は後から出てきたことが分かると思います。
どのみち、ビジネスは一人でやるものではありません。
多くの人の思いを繋ぎ、夢を叶え、苦難を解決するための乗り物だと思えば、ビジネスを始めるためにはお金以外のチケットがあることが見えてくるのではないでしょうか?
いつもお読み頂きありがとうございます!
※この物語は、実体験をもとにしたフィクションです。
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