成果を上げる人と、そうでない人の分かれ目は? 最短ルートに投資する (第21話 手作りのチラシ)

― 省吾は、はじめての英検1級2次試験で衝撃を受ける。(第16話参照)自分なりに努力して臨んだはずだが、本番ではまったく勝負にならなかったからだ。合格に向けて、省吾がとった次の策とは? ―

 

「もう後が無い・・・」

これまでというもの、英検だけに賭けていたので他の科目の成績はひどい有様だ。

だが、どこかでキリをつけなければならない。

次、受からなければ、大学に入るまで、英検は一旦保留にするべきだろう。

 

そんなことを考えながら、俺は試験会場を出た。

会場を出るとすぐに、英語スクールの散らし配りの人たちが次々と資料を渡してくる。

敗戦色濃厚な気分の俺は、何も考えず、言われるまま適当に全部もらって帰った。

 

「さて、どうしたものかな。」

今日は特に勉強道具も持ってこなかったし、さっきの試験の問題冊子があるわけでもない。

帰りの電車の中で、俺はさっきもらった資料をぼんやり眺めていた。

 

各社きれいな資料を作っているが、中に一つだけ、手作り感満載なチラシが入っているのに気づいた。

青い色紙に、プリンターで印刷したような出来映えだが、立派な資料より、書いてあることがストレートに目に入ってくる。

 

論理的一貫性のあるスピーチの組み立て方や、

自分の主張をわかりやすく伝えるための方法など、

英検1級2次の突破に特化した対策が書いてあった。

 

今日、初めての試験を目の辺りにして、自分に足りないことは何かはっきりわかったが、どう克服するべきかは途方にくれていた。

まるで、そんな俺のための解決策が書いてあるように思えた。

 

俺は翌週から、そのスクールに通うことに決めた。

しかし、レッスン料をどうするか、それが問題だった。

 

「次で受かれば、高校としてもかなりの宣伝効果になるはずだから、来年からは特待生にしてもらえるはずだよ。」

「残り2年間、学費が無料になれば悪くない投資でしょ? きっと元は取れるからさ。」

謎の皮算用で、親はあっさり納得してくれた。

金は用意できた。

 

レッスンの内容はチラシに書いてあった通りだった。

今まで自分がやっていた勉強は何だったのかと思うほど、行くたびに新しい気づきがある。

だが、面白いことに一旦知ってしまえば、もうそれが当たり前だと思うような不思議なことも多かった。

 

それがいわゆる、「蓄積されたノウハウ」というものなのかもしれない。

一つ一つは、調べれば分かるし、知ってしまえば当たり前の知識になる。

 

しかし、その一つ一つの知識や経験が、パズルのピースのように正しく集められ、並んでいることに価値があるんだろう。

 

自分でもパズルのピースを拾い集めていくことは出来るだろうが、すべて集めて、形にするまでには多大な労力と、膨大な数の失敗が必要になるはずだ。

 

小さな方向性のずれが、積み重なって、最後には、ゴールから遠く遠く離れてしまうこともあるだろう。

 

前回、2次試験に受からなかった時の俺はまさにそんな感じだったと思う。

やれるだけの努力をしたつもりになっていたが、その努力はゴールにつながる道を通っていなかった。

 

次の試験で、俺はとうとう2次試験を突破した。

俺は1次試験合格の時と同じように、机の上にある合格通知を見ながら、静かに喜びをかみしめた。

 

つづく・・・

photo credit: Tax Credits via photopin cc

目次

あとがき

やり方がわからないなら、その道のスペシャリストの力を借りるのも手です。

あらゆる成功と失敗を繰り返し、豊富な知識を持っている人は、

・最短ルートを、

・最高の段取りで

進む方法を示してくれます。

 

また、初心者が気づかないようなことでも、当然のことのように対処するでしょう。

 

しかし、大抵、この蓄積された経験とノウハウの価値には対価が伴います

そこをどう考えるか、これが大きく伸びる人とそうでない人の分かれ目かもしれません。

 

たまに、自分の時間は無料だと思っている人がいます。聞けば「そんなことはない」と答える人でも、事業計画の中に、自分の時間の対価や、それを誰かに実行させた場合の人件費を含めていない人もいます。

 

私は、自分の時間こそ、貴重品のように扱っていかなければいけないと考えています。

 

困難な目標を目指すときほど、自分の頭で考えるのはもちろん、

・自分の時間

・知らない道で自分が失敗するかもしれない可能性とその場合の損失

をスペシャリストに支払う対価と天秤にかけてみてください。

 

任せられることは人に任せて、自分は自分しか出来ない仕事に力を注ぎ込んでください。

 

いつもお読み頂きありがとうございます!
※この物語は、実体験をもとにしたフィクションです。

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この記事を書いた人

田畑ゼミ主催者。

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