― 省吾は高校の卒業式を終え、折しも重なった大学の合格発表へ向かう。そこで省吾が見た世界とは? ―
「長い戦いだった。」
数年といえば時間的には短い期間かもしれない。
だが、18歳の俺にはこの上なく濃い時間だった気がする。
今日は高校の卒業式であり、第一志望校の合格発表の日でもある。
気もそぞろに、卒業証書を受け取ると、俺は高校の思い出を懐かしむ暇もなく、次の目的地を目指した。
「省吾君、今日は合格発表だろう? 手応えはあったかね?」
途中、学校の渡り廊下で高校の理事に声をかけられた。
「はい、やるべきことはすべて出来たと思います。」
俺は、まだ記憶に新しい試験内容を思い出しながら、確かに手応えを感じていた。
「そうか、期待しているよ!」
「はい、有り難うございます。」
俺は教室に戻って荷物をまとめると、玄関へ向かった
だがそこで信じられないことが起きた。
「・・・ まあ、今回は無理だろう。」
「そうですな、あの大学はそんなに甘いところじゃないですよ。」
「はははは・・・」
下駄箱で靴を履き替えていると、先ほどの理事とその取り巻きが、俺のことについて話しているのを聞いてしまった。
人間とは分からないものだ。
あまりに不用意な発言ではないかと思いつつ、俺は姿を見られないよう学校を出て、急ぎ電車にのった。
大学の正門をくぐると、
そこには怒号のような歓声、すすり泣く声、声にならない声がひとつになったような
奇妙な世界が広がっている。
俺は人混みをかき分けながら、まずは自分の学科の合格者掲示板を目指した。
そこまでは距離にして100メートル。しかし、とてつもなく遠いところに見えた。
掲示板を正面に捉え、一歩、また一歩と進むにつれて、目の前に待ち構えるもの以外は見えなくなり、すべてが静かになっていく。
あと一列進めば、全てが分かるという時、俺はただ一人、海の底を歩いているようだった。
視界が開け、自分の受験番号が目に飛び込んできたあとは、もう自分がどういう反応をしたか良く覚えていない。
正しく目標を捉え、やるべきことをやりきれば、自分の中で感触がある。
その感触が、結果を伴ったとき、それが正しかったということも分かる。
自分の感触を信じる根拠が出来ていくということだ。
「自信」というものは、かくも静かで、おだやかなものかと、少しだけ分かった気がした。
つづく・・・
あとがき
「自信」は自分を信じると書きます。
自分の考えたことが、自分の考えたとおりになる、という経験を積み重ねることで自分を信じることが出来るようになっていきます。
しかし、実際はそんなに大げさなことではありません。
これにはちょっとしたコツがあります。
脳にとっては、大きい成功も、小さい成功も、成功であることには変わりがありません。
だから、
・今日は朝5時に起きる
・昼ご飯は席について10秒以内に注文する
・3時ぴったりにコーヒーのふたを開ける
など、思いつきのような小さな目標を自分で決めて、それを実現するという活動を繰り返せばOKです。
これで、「自分が思えば叶う」を信じる思考回路が強化されていきます。
是非試してみてください!
いつもお読み頂きありがとうございます!
※この物語は、実体験をもとにしたフィクションです。
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