願いが叶わない理由と、努力が報われない理由。 (第16話 世界が違う)

迷路を進む子供 ストーリーでわかる自由の作り方

― 省吾は高校入試が終わると、また英語の勉強ばかりしていた。英検1級合格を目指す省吾が目の当たりにした世界とは? ―

 

とうとうこの日が来た。

 

英検1級の1次試験の結果が届き、今目の前にある。

 

俺は軽く手をこすり合わせ、そっとはがきを手に取ると、恐る恐る結果を確認した。

 

「合格」

 

そう書いてあった。合格の文字に「不」はついていない。

英検2級のときは飛び上がって喜んだが、今回はなぜか静かな気分だ。

 

「よしっ」

俺は小さく拳を握った。

 

次は2次試験だ。

俺は、色々と本やビデオ教材を買ってきて、2次試験まで毎日のようにそればかりやっていた。

 

そして2次試験の当日・・・

 

会場に到着すると、俺は同じ面接グループの人たちと席に座っていた。

まもなく試験が始まるという段階で、何か参考書を見ている人などいなかった。

 

二人の面接員が到着し、面接が始まる。

俺はグループの6番目だ。

 

しかし・・・

 

自分の順が回ってくる前に、既に雲行きが怪しくなった。

 

他の人のスピーチを聞いていると、今まで自分が考えていたものと、何か、ひどく方向性が違うことに気付いた。

 

これは海外の就職面接かと思うほど、皆自分のスピーチについて、「自分の姿勢、思い入れ」を軸に、持論を展開していた。

それも、スピーチ直前に受け取った「お題」に沿って、である。

 

2次試験といえば、数分スピーチして、質疑応答に答えるだけだろうと考えていたが、そうではなかった。

もはやこれはスピーチではなく、プレゼン大会だ。

 

5番めの人は英語がペラペラで、ほとんどネイティブだった。しかし、その人でさえも、論理の一貫性や、根拠の薄さをつかれ、かなり質疑応答で苦戦をしている。

 

これは英語を話すという試験ではなく、もはや「伝えるとは何か」の試験なのか?

全く敵を知らずに敵陣に乗り込んででしまった。

 

面接がすべて終了すると、バリトンボイスの、立派な赤茶色の口ひげを蓄えた面接員が最後にこう言った。

 

「あなた方の中で、受かった人もいれば、そうで無い人もいる。」

既に結果は出たということか・・・

 

帰りの電車で、この言葉だけが頭を巡っていた。合否通知を待つまでもなく、もう結果は見えている。

 

これまで、努力さえすれば何でも出来ると思っていた。

自分で考えられることは全部やった。だが世界が違った。

 

どんなに毎日勉強しても、合格につながらない努力なら結果は出ない。

 

「やり方を根本から変える必要がありそうだな。」

俺は面接会場を出るときに、何気なく受け取った英語スクールのチラシをぼんやりと眺めていた。

 

つづく・・・

photo credit: smithco via photopin cc

あとがき

「願えばかなう」
「努力すれば道は開ける」

 

嘘ではないと思います。

しかし、大事なのは、その願い方、努力の仕方です。

 

必死で努力しても報われないケースはいくらでもあります。そこに共通するのは、悲しいほど努力の方向性が間違っているというパターンです。

 

そうならないために、

 

「今自分がやっていることは、目標達成に関係があるのか?」

日々、この問いをしてみてください。

 

関係無いならその作業や勉強は止めて、関係があると思えることに意識を集中していきます。

 

目標が大きいほど、ゴールまでの道のりで、いろいろなことを考えて方向を見失いがちです。

こまめに軌道修正し、当初の目標を、視界の中心にとらえ続けて下さい。

 

いつもお読み頂きありがとうございます!
※この物語は、実体験をもとにしたフィクションです。

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